ぜ前回の記事と少しつながります。
SIRモデルとは
宿主集団を未感染の感受性固体(S)感染個体(I)回復個体(R)をグループ分けしその数の変化を微分方程式で表すコンパートメントモデルである。
感染個体が回復しても感受性固体に戻る場合をSISモデル、回復すると免疫を獲得し二度と感染しなくなる場合をSIRモデル、これに潜伏期間を考慮したモデルをSEIRモデルと呼ぶ。
宿主の集団を3つのグループ,感受性個体(susceptible, S),感染個体(infected and infectious, I),回復して免疫をもつ個体(recovered, R)に分ける.毒性の強い伝染病の場合は,感染によって宿主が死亡することもある.この場合グループRに病気によって死亡した個体も含める.それぞれのグループに属する個体の数も同じ記号(S,I,R)で表す.単位時間あたりにSからIに状態遷移する個体の数は,感受性個体の数と感染個体の積に比例するとして,βSI,IからRに遷移する個体の数をγIとする(図4. 1).ここでβは感染率,γは回復率(あるいは病気による死亡率) を表す.このとき感受性の個体の数S,感染個体の数I,回復個体の数Rは以下の微分方程式にしたがって時間変化する.dSdt=−βSIdIdt=βSI−γIdRdt=γI(4. 1)これがSIRモデルと呼ばれる伝染病流行の基本モデルである
R₀が1をこえたとき、感染者は感染サイクルごとに拡大再生産されるから感染者数は増加し、1を下回れば流行は収まる。
ワクチンに期待しても意味ない?
ポリオウイルスの例を見てみよう
ポリオとはWHOが指定した伝染病根絶のターゲットである。先進国では生ワクチン(ポリオウイルスが弱毒化したもの)の接種によって制圧できた。今、自然観戦している地域はアフリカや西アジアの一部でみられる。
ポリオウィルスはコロナウイルスと同じく突然変異率の高いRNAウイルスではあるが、インフルやエイズで問題になる抗原のエスケープはあまり起きない。しかしながら、弱毒化したワクチン株は強毒変異する可能性がある。
この強毒変異の可能性は低くなく、数人に一人の割合でみられるがポリオの大流行が起きないのは集団のほとんど全員がワクチンで免疫を持っているからである。
ワクチン接種を徹底させ自然感染を0に抑え込もうとしてもその過程での強毒復帰の再流行は消しきれない。
生ワクチン株は弱毒化されているとはいえ弱いながらも感染力はある、サイレントサーキュレーションが起きるのである。
ワクチン接種を完全停止してもウィルス保持者の割合の減少は長い期間を待つ必要がある。
だが、ポリオワクチンには生ワクチンのほかに不活ワクチンがあり、これはいきたウィルスではないので強毒株復帰のリスクはない。しかし、生ワクチンよりも免疫力を高める効果はないし、生ワクチンから不活ワクチンへの切り替える段階で強毒株復帰流行のリスクはある。