我非車は猫である。名前はまだない。
どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめしたところでニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
我非車はここで始めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くとそれはストーカーという人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。
このストーカーというのは時々我々を追跡して離さないという話である。
しかしその当時は何という考もなかったから別段恐ろしいとも思わなかった。
ただ彼の瞳に写されて焼き付けられたとき何だかソワソワした感じがあったばかりである。
少し落ち着いてストーカーの顔を見たのがいわゆる青葉レイタというものの見始であろう。