寒い、冬が訪れたようだ。
冬の朝は八寒地獄の一つである。
八寒地獄とは仏教における寒さと氷で亡者を苦しめる八種類の地獄のことである。
頞部陀地獄
「厳寒が身に迫って、その身に水疱がを生ずる」
尼頼部陀地獄
「厳寒が身に迫って、身の水疱が裂ける」
頞哳吒地獄
「苦しみに耐えきれないでアタタという声を発する」
臛々婆地獄
「苦しみに耐えきれないでハハヴァという声を発する」
虎虎婆地獄
「苦しみに耐えきれないでフフヴァという声を発する」
嗢鉢羅地獄
「厳寒が身に迫り、身が変じて折れ裂けることが青蓮華のごとく」
鉢特摩地獄
厳寒が身に迫り、身が変じて折れ裂けることが紅蓮華のごとく」
摩訶鉢特摩地獄(大紅蓮地獄)
厳寒が身に迫り、身が変じて折れ裂けることが大紅蓮華のごとく」
この地獄から逃れる術はない。
布団から出た瞬間、人の体は紅蓮華の如く折れ裂ける。
布団の中ーーー閉じた世界の中でしか人は生きられない。
だが、それでも外へ出なければならなかった。
夜の闇が音もなく部屋の中を満たす冬の朝
僕は寒すぎてサムスになった。