三月生まれの生存戦略

Twitterで言えないこと書きます。3月生まれで苦しむ子羊たちの先導者になります。

Symphonic=Rain 総評

死を避け、荒廃から身を清く保つ生命ではなく、死に耐え、死のなかでおのれを維持する生命こそが精神の生命である

G.W.F. ヘーゲル

 

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嘘と雨の物語

 

ここは一年中雨が降る街ピオーヴァ、ここには有名な音楽学院がある。毎年多くの音楽家を輩出するこの学院は稀有な音楽の才能を持つ者しか入学できない。主人公Chris Velding(以下クリス)は魔法楽器フォルテールを弾くことができるさらに希少な才能の持ち主であった。科学が一般的になる前の時代には人々は魔力を保有し魔法が使えたという。魔法の時代は廃れ科学が蔓延りその文化は絶命していったが、フォルテールという一つの楽器だけがその名残として現代に存在している。それを弾けるものは魔力を持つ者だけであり努力等では弾くことはできない。クリスは幼少期に通っていた音楽教室に置いてあった誰も使えず隅に放置されたほこり被ったその魔法楽器に、興味本位で触れたら数十年音を奏でなかったその楽器から誰も聞いたことのない音を小さな村の音楽教室に響かせた。

その音楽教室には幼馴染の双子の姉妹が通っていた、姉のArietta Fine(以下アル)妹のTortinita Fine(以下トルタ。サムネの子はトルタ)。二人とも歌うことが好きだったが、姉には才能が無かった。

そのため音楽学院に通えたのはクリスと妹だけであり、姉は村に残り近所のパン屋で働くことになった。

 

クリスは姉妹のうち姉の方、つまりアルを恋人に選んだ。周りから共に音楽学院に進学する妹のほうが良いと、プロになってもフォルテールと歌のパートナーとしても相性が良いとも、しかし周囲の意見を押し切り姉の方を選んだ。アルもトルタもクリスのことが好きだ、しかし最初にクリスに好意を抱いたのはトルタの方だったにも関わらず。

毎年クリスマスにはクリスと会い、それ以外は毎週手紙でお互いのことを近況報告することとなった。

クリスの眼からは妹は強く映り自分は必要ないだろうと考えたのだ。アルはトルタに歌唱力の差が開いていき、音楽教室にも顔を出さなくなってしまう、アルとトルタは恋敵ともいえるがそれ以上に姉妹愛があった。クリスとのことも常にトルタへの罪悪感が付きまとっていただろう。

 

 

そしてゲーム本編はクリスたちが三年生、卒業演奏に向けてパートナー探しするところから開始される。フォルテール学科では卒業演奏は声楽科(声楽科でなくても問題はないが基本は声楽科)の子とデュエットを組んで演奏することになっている。人望があればすぐ決まるのだろうが、クリスの性格上(この街に来る前に事件が起きそれ以降クリスの心は閉じた状態にある)、人とかかわるのを避けているので(友人もアーシノという同じ学科の男性一人である)あてがなかった。候補を探すために学院内を巡り見つけることになる。

 

候補は三人。

 

誰も寄り付かない旧校舎で独りで歌う人見知りな一年生のリセルシア

 

生徒会長で教師からの信頼も厚い有智高才のファルシータ

 

クリス達のことをずっと支えてる面倒見の良い幼馴染のトルタ

 

一人を選びルートへ向かっていく。

 

宿泊している学生寮のクリスの部屋にはクリスにしか見えない音の妖精フォーニ(phoni)が住み着いている。毎週日曜アンサンブルをするという約束がある。このフォーニの存在はクリスの心の支えになっている。

 

他にも教師のコーデル先生などいる。登場人物は多くはない。

 

 

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総評

 

絶望の雨

 

最初から恋人がいるという状態でのスタートは珍しいのではないだろうか?だからこそ修羅場と呼ぶべきかドロドロとした陰翳な雰囲気に蝕まれていく。どの選択がアルへの裏切りになるのか、それはクリス以上にトルタが悩まされた問題でもある。

全ルートやって公式SSもすべて網羅した上で、一番悲劇だった、というよりも一番報われないのはトルタだろう。リセもゲーム本編だけだとアレだが、後日談のSSは希望に満ちている、、、気がする。ファル様はノーコメント。(様という敬称をつけるのは本編をプレイすればわかる)encoreまで進めばリセとファルはランデブーですよ。

リセルートもファル様ルートも人によってはトラウマだろう。本記事では触れないこととする。本筋の話ともズレるしね。

 

雨がこの作品の一つのテーマであるのだが、雨に対するイメージというのはあまり良いものではないだろう。ちょうど今記事を書いてるこの時にも雨が降っているのだが、そのせいであつ森の一番くじを買いにコンビニに行くのがだるい。くじを引いたらFだったし、あーもう最悪や! 

雨で行事がつぶれることを祈ってる陰キャは好きなのかも。

 

本作でも雨はあまり良いイメージではない。まるで何かの象徴かのように降り続ける雨。光を遮るこの現象は登場人物の先行きを示すかのよう。

雨ではなく誰かの涙なのかもしれない

 

 

アリエッタへ。
 ――雨の街から、君への手紙を書いています。

 

透明な嘘

この作品はミステリーとして扱っても問題ないと思える。隠された真相感情をプレイヤーは探しに行くのだから。

 

トルタが最愛なる二人のためにつき続ける嘘、

その嘘が晴れていく中盤から終盤からの見事に回収されていく伏線と鬱くしき現実。

トルタの口から語られる前に気付いた人は多いだろう。というよりもトルタは気付いてほしかったし気づかれずこのままなら…というアンビバレントな想いにずっと包まれていた。苦悩してでも前へ、姉のためならと突き進んだ彼女の願いは、最後に。。。

一人は二人のために、二人は一人のために。

 

その三者三葉の螺旋に絡まる願い

 

アーシノは語る。クリスの奏でるフォルテールの音色は全てを赦してくれるようだと。。。

 

フォルテールは魔力で弾く、魔力は感情によって変容する。音色も。クリスの音色の魅力の根源は深い悲しみにある。

 

「わたしは、わたしのなれる何者かになりたかった」 「妖精の本」より

 

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いつも そこにいた
気づかないだけ
ココロの瞳で
それをみつけるんだ
きかせて 私だけにきこえる声で
いつか 止む雨かもしれない
止まぬかもしれない
でも みえない力を信じていいの
いいの? …いいの

止まない雨などないのだから。

 

 

評価 100点満点中

 

Symphonic=Rain 100点

 

 

 

BF2042 0点

 

 

実は背景美術やOPはあのufotableが手掛けている。リメイク版のOPが違うけど。

 

音楽は岡崎律子氏が担当しているのだが、実はこのゲームが発売して一か月後に亡くなっている。末期がんとの闘病生活のうえで作曲作詞をしていた。

曲の「I'm Always Close to You」は遺言とも受け取られる。