説明的ではないところが個人的に良いポイントだった。普通の邦画の作りではないところがかなり良い。説明的ではないとは言ってもキャラクターの心情は巧みに表現されている。それは映像としての演出を通じて。
車の中という限られた状況の中でうまく映像としての美術、映画としての表現を上手く利用している。
音響の良さは素晴らしい。ぜひ映画館で味わいたいものであった。
ストーリー、脚本も出来が良いものである。
役者としての主人公、脚本家としての妻との夫婦のやりとり、妻が死ぬまでにどんな生活だったのかの描写に30分使い果たしている。
そこまでかけてやることに意味がある。
若い役者の恋敵のような存在はあっけない退場だったので困惑するが、まぁそれまでの流れや彼との会話等からこうなることも頷けるものではある。
ドライバーの少女の過去を掘り返していくことで、主人公も変化していく。
役者という立場を上手く活用した作品であった。
演技をする役者、しかしその演技は偽物ではなく真実としての演技という、一見矛盾しているかのように見えるが、その矛盾に見えるものこそが真実なのであろう。
演技というフィクションのフィルターを通じて、現実、リアルというものに近づいてく、いや、リアルをより一層、現実というものらしくしていく。
現実を生きるためのイメージトレーニングとして映像や作品や脚本、戯曲というものが存在している。