メタモンとは
タイプ:ノーマル
高さ 30.5cm
重さ 4kg
特性 じゅうなん
第一話
父は私が物心つく前に他界した。だから私は父のことを知らない。父のいる世界に生まれたわけではないから。
だが母は違った。父のいる世界 ーそれは私の知らない世界、つまり鬱つくしき世界なのだろうー を知っていた彼女は今在るこの世界に耐えることはできなかった。
それでも私を育ててくれたのだ。でも私じゃ父の代わりになることはできなかった。
私は母の心を埋める欠片ではなかった。
そんな鬱屈とした日常の中、私の周囲は大きく変化した。
母が再婚したのだ。
再婚相手はアメーバ状の身体をしており、皮膚の色は茈、目は黒曜石を嵌めたかのような瞳で、口は空間を切断するかのような一本の線のみ。
実にシンプルな見た目だった。
だがそのシンプルさに私は美を見出した。
なんと鬱くしい生きものなのだろうか。
美がメタモンそのまのであるのか、それとも美はメタモンを包むこの虚無の夜と等質なものなのかわからなかった。おそらく美はそのどちらでもあった。
細部でもあり全体でもあり、メタモンでもありメタモンを包む夜でもあった。
細部の美はそれ自体不安に充たされていた。
それは完全を夢みながら、完結を知らず、次の美、未知の美へとそそのかされていた。
第二話
妹ができた。
彼女は私と違って6Vを遺伝していた。私には何一つ優れた能力は無かった。私が受け継いだのは母親からの白銀の髪と真紅の瞳だった。
妹は現在の父、つまりはメタモンと同じ姿形であった。医学的にこれはあり得ないことだった。
そのせいで妹が産まれてからは、世界中の学者や研究者たちに毎日のように弄りまわされた。
研究所を転々とする妹。
だから私は妹と会う機会がほとんどなかった。
ようやく妹と会えるようになったのは私が22歳の時だ。それも一日限りの。
それまでに何度か透明な厚いガラス越しで話したこともある、最後に会えたのは2年3か月前だ。
私は身元引受人として研究所の前で待っていた。
研究所は外壁を5Mほどの高さの分厚いコンクリートで囲まれていて、監獄のようだ。
だから私はこの研究所は嫌いだった、匂いも雰囲気も全てが鼻につく。
鉄製のシャッターが開き、出てきた妹の姿は私そのものだった。まるで鏡に映したかのように。
久しぶりの再会、そして想像もしていない姿に私はかける言葉が見当たらなかった。
どうして
ーどうして私なのだろうか。ー
久しぶり!いや~何年ぶりだろうね~、二人きりで会えるのはさ。
さぁ。。。最後に会ったのがいつかなんてもう覚えてないかも。
ー覚えてる。でも口には出せなかった。ー
お姉ちゃんにさ、伝えたいことがあるんだ。
お姉ちゃんも知ってるでしょ?今のこの星の人類の数は数百万人もいないってこと。ニュースで毎日流れるよね、今日の出生数全世界で784人、死亡者数116745人。30年前に起こったパンデミック、そのウイルスは後遺症として人間の生殖機能を失わせた。もう人類は子孫を残す力は残ってない。
知ってるよ・・・、もう滅亡する運命だって。。。みんな思ってる。
そんな人類の危機を救うのは私だ!って言ったら信じる?
。。。
ー知っていた。知っていたよ。貴方が生まれたときから。ー
私の体質でどんな相手でも理想のパートナーに変身できる。それもどんな性別でもね。
・・・
ーメタモン族にはウイルスの影響はなかった。生殖機能は失われなかった。だが問題は人間と子孫繁栄できるかどうかだった。ある特異遺伝子を所持した女性なら可能であるということが判明したのは16年前だ。母がその治験募集に応募して、それで・・・ー
ねぇねぇ、聞いてる?
ごめん。。。
も~、昔からかわらないね、ずっとボーっとしちゃってさ。あ、あともう一つ報告があります!私なんと結婚します!
結婚って… まだ10代じゃない…
明日誕生日で16だよ。知らなかった?
ー知っていた。ー
ー6Vメタモンはそれほどの価値があった。とはいえ世界中の上流階級やら貴族から求婚されているとは…実にくだらない。ー
また会えなくなるね~
そうね。。。
ー別に孤独には慣れていた。いつだって独りで生きてきたじゃないか。誰かに依存しないように生きてきたんだ。母のように依存してしまったら、失った時壊れてしまうから、そうならないようにって誓ったはずだろう?なのに今の私の心は、あの日捨てたはずの感情が私を侵食していく。暗い黒い海の底へ沈んでいくように。ー
最期にさ、お姉ちゃんの望む姿に変身してあげよっか?
じゃあ。。。素の状態に戻って。
え…?
あの姿が一番好きだから。
紫のアメーバだよ???
いいから。
彼女は変身を解いた。
私は有無を言わずに抱きしめた。
体温すらも感じられない、本当に無機物を抱いているかのようだ。
変わってるね、こんな姿が好きだなんて。
そのままの姿を愛してくれるのは彼女にとって初めてのことだったらしい。
理想も願望も当てはめられ、本当の自分を見失いかけないただの器としての存在に全人類が渇望している。
もう別にいいんじゃないのか人類なんて滅んでも、今はそんな気がする。
いや、昔からずっとそんなことばかり考えてきた。
生命とは清浄と汚濁の輪廻の中で輝く。
死を、滅びを、否定し始めたらそれは生命ではなくなる。
私はついに計画を実行に移す時が来た。
ねぇ!
生き物以外にも変身できたりするかな…?
できないことはないけど、何するの?
じゃあさ…
第三話
更新時期未定
生きていたらそのうち描きます。。。